LCC発祥の国、アメリカには、ジェットブルー航空という人気エアラインがあります。これも格安運賃でアメリカ国内、そしてメキシコ、カリブ海諸国を結ぶLCCですが、同社が売りとしているのは、何より「サービス」です。
「安さで勝負!」というこれまでのLCCの常識を覆したジェットブルー。豪華な革張りのシートを導入、機内エンターテインメントシステムを充実させ、他社との差別化を図っています。使用されている旅客機にも、まず、大きな違いがあります。
世界各国のLCCと同様に、ジェットブルーでも定番のA320を使用していますが、同社が保有している機材はしかし、それだけではありません。リージョナルジェット機と呼ばれるエンブラエルE190(標準で全100席前後)も導入し、近距離路線で飛ばしています。
実際に乗ってみれば、なぜこのジェットブルーが、そしてE190がアメリカのビジネスパーソンに愛されているか、すぐにわかるでしょう。小型機とは言え、通路を挟んで二席ずつという配置になったシートは高級感ある革張りで、ゆとりも充分です。各シートには、36チャンネルのディレクTVが視聴できるモニターも設置されています。追加で10ドル支払えば、さらに大きな上級席にグレードアップできるのも、大きな魅力の一つでしょう。
ジェットブルーは、実は、E190のローンチカスタマーでもあります。もともと、この機種のベースであるE170は、JALグループのジェイエアが地方路線で運航させていたのですが、座席数は定番機のA320や737の半分という絶妙なキャパシティに抑え、限られた空間をうまく使った設計には、ジェットブルーも注目していました。そして、E170をもとに胴体を延長したE190をエンブラエルに100機発注、短距離路線に活用しているのです。
現在、世界のLCCは中長距離路線の拡充に積極的で、A330などの中型機もどんどん導入しています。その一方で、機体のサイズは小さめ、座席数も少なめながら、キャビンの快適性を高めたリージョナル機は、LCCのニッチな需要を突いて、やはり人気を集めています。たとえば、エアベルリンのプロペラ機も、70席というキャパシティながら、静音、快適、そして格安と三拍子揃った魅力で、ドイツ国内での移動に、多くの人々から利用されています。
このようなリージョナル機の導入は、今後、ますます進んでいくかもしれません。ジェットブルーが新たなLCCの可能性と、そのお手本を示していることは間違いないでしょう。