現在、多くの飛行機の主翼の先端には、上方に向かってピッと立った「主翼端翼」があります(例:ボーイング737NG、エアバスA320neoなど)。これは、飛行機の空気抵抗を軽減するために装着されるものです。その仕組みについて、ここで詳しく紹介しましょう。
飛行機の主翼に流れる空気は、その上部と下部で速さが違います。上部には早い速度で風が流れ、下部には遅い速度で空気が流れ、「負圧」というものが生まれ、これが飛行機を浮かび上がらせる「揚力」になっています。
しかし、主翼の先端部分では、下から上へと空気が逃げてしまい、空気抵抗を生む「翼端渦」が発生します。それを抑え、上手に拡散させるのが、ウィングレットやシャークレットなどと呼ばれる主翼端翼なのです。
気流が翼の下面から上面へ向けて回りこむ「翼端渦」は、翼を後方に引っ張り、大きな空気抵抗を生みます。飛行機が前へ進もうとする力を妨げるので、昔から、「翼端渦」に関しては、対策が考えられてきました。
そして作られたのが、主翼端翼というわけです。主翼の先端でピッと立った端翼には、厄介な気流の渦を前向きの揚力(推力)に変える力があります。これによって、消費燃料も3〜5%程度節約できるのです。
ウィングレットやシャークレットと呼ばれる主翼端翼は、鳥の翼の形状から考えられた技術だと言います。実際、鷹や鷲の翼の形状をよく見てみると、翼が先端部分で上方に向けて反りかえるようになっています。あのライト兄弟も、飛行に関して基本的な部分は、鷹から教えてもらったと言います。実に何事も、自然界から人が学ぶことは多いのです。
公園で子どもたちが飛ばしている紙飛行機も、よく飛ぶものは、翼の先を少しだけ上に折り曲げていたりします。そうすると空中を舞いながら、風を味方につけ、飛行機が安定して長く飛ぶことを、子どもたちも「何となく」ではあれ、知っているわけです。
主翼端翼は、離れて見ると主翼の圧倒的なスケール感から比べると、小さなものに見えます。しかし、実際にはその大きさは相当なもので、約2.5mほどあります。ちなみに、飛行機だけでなく、風力発電用の風車の翼の先端部分などにも(やはり空気抵抗を小さくする目的で)、同様の工夫が見られることがあります。